初代理事長・東谷傳次郎が掲げ、クラブの運営理念として今日に伝えられている「以和為貴」の言葉は、昭和50 (1975) 年のクラブ開場15周年ならびに初代理事長顕彰の記念碑として鯉ヶ久保池畔に建立された石碑に刻まれている。
東谷は「和について」と題する会報座談会の中で、「あれは、ご承知の通り聖徳太子憲法第1条の『以和為貴無忤為宗』の前半をそのまま拝借したものです。昔からどの社会でも争いが絶えない。個人間でも、国家間でも。そこで第1条にお互いに仲良く和やかにしなくてはと明示し、そのためには人に忤(さから)わぬようにすることが肝要なので「無忤為宗」とつづいておる訳です。自分の欲しないものを、人に忤ってまで施すものではありません」として「当クラブのメンバーには各層の方々があり、非常にバラエティに富んでおるのですが、相集まってクラブを作っていますので、何といっても朗らかな気持ちでクラブライフをエンジョイしたいものです。そのためにはお互いが、職場のことなど忘れて、気軽に挨拶をかわし、仲良く和やかにしなくてはと、常日頃念願しております。その願望をあの碑文に託したわけで、私は『和魂(にぎたま)の碑』と呼んでもらいたい」と語っている。
鯉ヶ久保池畔のプロムナード脇に建立されていたこの石碑がその後のコース整備のなかで目立たなくなっていたのを、平成17 (2005) 年に理事長・深澤守が提唱して会員の目につくようにと池畔・練習Bグリーン脇に移設したが、深澤はこれに関して、「碑に刻まれている「以和為貴」の文字は、単に仲良く和やかなクラブライフを楽しもうなどの低次元の訓示ではなく、会員のすべてが協調融和して格調高いゴルフクラブに育ててもらいたいという東谷理事長の念願を顕したものであり、私達はそれに応えねばなりません」「私達会員は、ゴルフを媒体として飯能ゴルフクラブというコミュニティを構成しており、メンバーとしての様々な特権を享受しています。そのことは当然であるとしても、その反面、経済的負担はともかく、共同目的の完遂のためには時として心に染まない自己抑制にも耐えていただかなくてはなりません。会員相互の間に共に憂い共に楽しむという心の連帯があることによって、より格調の高いクラブライフが生まれ、引き継がれていくものと信じます」と、開場以来、半世紀わたって引き継いできたクラブの理念について会報に記している。
飯能ゴルフクラブ50年史より